これ以上近づいたら撃つぞ!〜シリコンバレーの鉄道駅は現代アメリカの縮図だった〜【林直人】第1回
【集中連載】これ以上近づいたら撃つぞ!〜シリコンバレーで実感したアメリカと日本の現在〜 第1回
為替はこのように複合的な要素から決まるものです。そして、今回の視察の結論を言うと、物価はすでに去年の一時期と比べれば相当安定していました。Walmartで買い出しをすれば日本と同じ程度の生活費で生活することも可能でした。アメリカでは確かに「焼肉のタレ」のような人の手が介在しているものは高いのですが、牛肉豚肉鶏肉のようなただ屠殺するだけで出せるものは日本よりも遥かに安く1/2〜1/3程度で買えるので、食費の総コストとしてはさほど変わらないのです。また時給も下がっていました。
1年前シリコンバレーに来たときは時給は24ドルからのスタートでした。いまでは18ドルスタートです。これはメキシコなどからの移民が、週1回英語学校に行きながら残りの日はバイトで生活するというようなことを移民局が暗に認め始めたのではないかと私は考えています。そのために労働供給がある程度満たされたのでしょう。バイデン政権のコロナ援助がある程度一段落し、レッドネックと言われる貧しい白人たちが再び働き始めたのも大きな要因ではないかと思います。このような状況はこれ以上の利上げはないと考える十分な理由になります。
一方、アメリカの製品に対するニーズは強まると考えました。これも後の連載で詳しく紹介しますが、棺桶が走っているのではないかと思えるほどに足回りが不安定だったテスラも最新機種ではトヨタと遜色がないほど足回りが安定していて乗りやすい車になっています。また、テスラは世界で初めて高度な衝突防止機能を搭載し、これにより自動車産業の勝負の土俵をハードウェアからソフトウェアに転換しました。自動運転機能についてもプログラミングしたものではなく、ニューラルネットワークによるものに変わり、技術革新が起こっています。
このような産業構造の変化が起きた場合、ソフトウェア開発に強いアメリカ企業が無双するというのが歴史の教訓ですので、アメリカ製品へのニーズは引き続き強く、一方で日本製品へのニーズは長期的にかなり弱まるのではないかというのが私の考えです(もちろん部品産業や生産機械産業など例外はありますが、そういった産業でさえも中国台湾韓国インドの競争相手がかなり肉薄してきていますので、楽観視は出来ません。なにしろ人口動態的にも日本はどう足掻いても衰退せざるを得ないからです。残った僅かな若者が猛烈に教育されることで社会を発展させることはありえますが、韓国の受験戦争を知っている私は、日本は相当抜本的に教育のあり方を変えないと韓国に負けると考えています。そういう危機感もあり、私は本業で韓国系の1日14コマの授業をするスパルタ英語学校に生徒を派遣するエージェント業もしています)。
こういう考えから、私は引き続きドルをある程度の額持ち続けることにしようと考えています。全体としての割合は少々減らして2割ほどは利確する予定ですが、利確した2割は自分の事業、それも全世界を対象にした商売に使う予定です。 この商売の調子がよければ一旦全額利確して商売に使った上で、また外貨で回収するのも手です。これもある程度のインフレが続く経済下では合理的な判断だと考えているからです。インフレ経済下では頑張って働いている若者がどんどんお金を稼げるようになります。ですから、とにかく本業集中で稼ぐこと、その上で今回の連載のように来た仕事は全力で引き受けることが収入を守り、収入を増やすために必要不可欠なのです。